「どういうチーム、どういうクラブを選んだら良いか」。親御さんから、時々そういう質問をされることがあります。我が子がスポーツを始める。その大事な進路をどうしたら良いか。この相談に対して「子供が行きたいところで良いんじゃないですか」と知ったような返事をすると、たいてい少し不満げな表情をされます。それはわかっている。最終的には "子供が選んだクラブで良い" そう思っている。でも、なんか遊んでばかりで大して身にもならないようなクラブを選んだら嫌だし、かといって強いけどスパルタなクラブを選んでスポーツ嫌いになっても困る。と、そんな親心が顔をのぞかせるわけです。どういうクラブなら上達していくのか。どういうクラブなら楽しくスポーツを続けられるのか。それを教えてほしい、と。

例えばこんな話があります。体操競技のあるレジェンド選手は、子供の頃に初めて出た大会でビリでした。周りの子供たちよりも技を覚えるのが遅く、大会はあまり好きじゃなかった。親に他のスポーツを勧められても、体操の方が楽しいからと体操を続けます。彼にとって体操は遊びの延長だったそうです。中学三年生の時、全国大会で42位。全国大会に出られるほどの優秀な選手ではあったけど、特別な選手というわけではなかった。ただ、彼はそこからさらに上達していき、高校三年生で高校日本一。そしてその後、何度も世界一になります。

子供の頃にあまり目立たなかった選手が世界のトップ選手になる。スポーツの世界で、この手の話は枚挙にいとまがありません。もちろん、小さい頃からずば抜けた才能の持ち主がそのまま大きくなって世界に羽ばたいて行く、そんなアスリートも多くいます。でも不思議なのは、子供の頃誰が見ても才能があるように見えないのに、ある時から急に上達曲線が上向きになるアスリートも、また数多くいるということです。

友人のヒゲゴリラがこんな話を教えてくれました。

彼は自分の野球チームを作るほどの野球好きで、息子が生まれたら一緒に野球がしたいと思っていた。だから息子をどんなチームに入れたら良いか調査するため、幾つかの野球チームを継続的に見て回りました。彼の地元には2つの少年野球チームがあります。1つは毎年優勝候補の強豪チーム。そしてもう1つは負けてばかりの弱小チーム。

強豪チームはとても厳しい。練習中のグラウンドにはひっきりなしに大人の罵声が飛び交っている。時には涙を流しながら、子供たちは必死になって練習している。試合では送りバントでランナーを確実に進めてから点を取りにいくという作戦をよく用いる。

弱小チームはとても楽しい。練習グラウンドにはいつも子供たちの笑顔が溢れている。試合ではランナーが出てもみんなブンブンバットを振ってくる。ヒットを続けるのが難しいのは大人も子供も同じようで、なかなか点が入らずよく負ける。

同じ地域で活動するこの2つのチームの子供たちは、小学校を卒業するとほとんどが同じ中学校の野球部に入る。そして子供たちが入学して2年ほど経ち、彼らがレギュラーとして試合に出る頃、面白いことが起こる。なんとレギュラーのほとんどが弱小チームの子供たちになる。試合でブンブンバットを振り回していた弱小チームの子供たちは、身体が大きくなってみんなよく打つようになる。そんなことが毎年のように起こる。ただ残念なのは、そんな未来明るい弱小チームは子供たちが年々減っていてチーム存続の危機にある。

最初上昇してその後停滞する上達曲線と、しばらく停滞した後急激に上昇する上達曲線

そんなとても興味深い話を、野球好きのヒゲゴリラが話してくれました。大好きな息子のサッカーの試合を見ながら。

バットを構えるクマ